電気は自分でつくる — 日立・東京ガスなど4社の「電源併設型データセンター」と、その「グリーン」の中身

✍️ DCトレンド研究編集部(現役DCエンジニア監修)
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4社で「電気つきのデータセンター」をつくる

2026年10月19日、4社が共同で発表しました。

会社どんな会社か(発表資料より)
日立製作所データセンターの冷却・発電設備の設計、機器、保守サービス。データセンターの電力・IT・冷却をまとめて運用する「HMAX Data Center」を9月に提供開始
東京ガス自社の敷地に置く電源(オンサイト電源)の設計・開発・運用。グループ会社が、電力網とガスコージェネレーションを組み合わせる「電源ハイブリッド型DCソリューション」を展開
Brookfield(ブルックフィールド)カナダの資産運用大手。世界で150以上のデータセンター(運用容量約2GW)と、約47GWの再生可能エネルギー発電を保有・運営
Hartree(ハートリー)エネルギーなどを扱う世界的な商社。電力、LNG、カーボンクレジットの取引や、蓄電所を含む再エネ開発

4社は9月30日に覚書を結びました。2025年7月に日立・Brookfield・Hartree の3社が始めた協業に、東京ガスが加わった形です。

目指すのは、「電源併設型グリーンデータセンター」の基本構想と、いろいろな場所に展開できる標準モデルをつくることです。最初のプロジェクトとして、関東と九州でデータセンターの開発計画をつくる予定です。具体的な場所、規模、時期はまだ公表されていません。

標準モデルの4つの柱

発表資料では、標準モデルで検討する中身を4つ挙げています。

柱中身
① 複数の電源の組み合わせ敷地内の発電設備を「ベース電源」にし、蓄電池や電力網からの電気を組み合わせる
② インフラ全体の冗長化設備の故障や電力の変動があっても止まらないよう、冷却設備や配電設備まで含めて二重化を設計する
③ 脱炭素の要件カーボンクレジット、環境価値、再生可能エネルギーなどの活用を含めて、何をもって「脱炭素」とするかを決める
④ 標準化・モジュール化データセンターの建物・設備と、敷地内の発電所・設備をパッケージにして、立ち上げ期間を短くし、需要に合わせて増やせるようにする

ポイントは①です。ふつうのデータセンターは、電力網(系統)から電気を買うのが主で、発電機は停電のときの予備です。この構想は、それを逆にします。ふだんの電気を敷地内でつくり、電力網は補助に回すという考え方です。

なぜ「電気を自分でつくる」のか

背景にあるのは、電力網の空きを待つ時間が長くなっていることです。発表資料も「電力系統の制約による電源確保までの期間の長期化」をはっきり課題に挙げています。

大きなデータセンターを電力網につなぐには、変電所や送電線を増強する必要があることが多く、数年単位で待つケースが出ています。そこで国は、使うあてのない申し込みで空きを押さえておくことを防ぐルールづくりを進めています(「とりあえず押さえる」はもう通らない)。

それでも、AIの需要は待ってくれません。電力網を待たずに、電気を自分で持ってくる。これが、今回の協業の一番の狙いです。

JERA千葉とは、何が違うのか

10月3日の記事で取り上げたJERA千葉の計画も、「電力網を通さない」点では同じです。ただ、考え方はかなり違います。

JERA千葉日立・東京ガスなど4社
電気の出どころすでに動いている大型火力発電所から、直接もらうデータセンターの敷地内に、専用の発電設備を新しく置く
規模最大40万kW(400MW)の1カ所未公表。標準モデルを複数の場所に展開する考え
場所の選び方発電所がある場所に限られる燃料が届く場所なら、比較的自由に選べる
めざすもの1つの巨大な拠点くり返し建てられる「型」

JERA千葉が「大きな発電所の隣に、大きなデータセンターを1つ」だとすれば、4社の構想は「発電設備とデータセンターをセットにした『型』を、あちこちに」です。発表資料が「立地選択肢の拡大」や「エネルギーの地産地消」を掲げているのは、そのためです。

【現場視点】「グリーン」の中身と、電源併設型の論点

論点1:敷地内の発電は、おそらくガス。「グリーン」はオフセットで実現する

発表資料には、敷地内の発電設備の燃料が何かは書かれていません。ただ、手がかりはあります。

  • 東京ガスのグループ会社が展開しているのは、電力網とガスコージェネレーション(ガスで発電し、その排熱も使う設備)を組み合わせる仕組みです
  • 発表資料は「グリーンエネルギーなど」の意味を注記で説明しています。そこには、燃料の採掘から燃焼までに出る温室効果ガスを、カーボンクレジットで相殺する(カーボンオフセット)ことや、非化石証書の活用などが挙げられています

「燃料を燃やしたときに出る分を相殺する」と書いている以上、ガスなどの燃料を燃やして発電することが前提だと読むのが自然です。

つまり、ここでいう「グリーン」は、発電そのものが二酸化炭素を出さないという意味ではありません。出た分を、証書やクレジットで埋め合わせるという意味です。これは悪いことではなく、今の技術でできる現実的なやり方です。ただ、データセンターを借りる企業が「再エネ100%」をうたう場合、どの証書・クレジットで、どこまでを相殺しているのかを確認する必要があります。脱炭素の考え方はこちらの記事でも解説しています。

発表資料の③が「脱炭素化方策の要件定義」になっているのは、何をもって「グリーン」とするか自体を、これから4社で決めるということでもあります。

論点2:ガスコージェネは、データセンターと相性がいい

ガスで発電すると、電気と一緒に大量の熱が出ます。ふつうの発電所では、この熱の多くを捨てています。

データセンターは、電気を使うのと同時に、ずっと冷やし続ける施設です。発電で出た熱を使って冷水をつくる冷凍機(吸収式冷凍機)を組み合わせれば、捨てていた熱を、冷房に回すことができます。電気でチラーを回す分が減るので、施設全体の効率が上がります。

電気も冷房も一年中、昼も夜も必要という点で、データセンターはコージェネが最も得意とする使い方に近い施設です。

論点3:「ふだんの電源」が止まったとき、どうするか

発電所に頼るということは、その発電設備が止まれば、データセンターも止まりかねないということです。電力網なら、どこかの発電所が止まっても、ほかの発電所がすぐに補います。敷地内の発電では、それを自分で用意する必要があります。

そのため、②の「インフラ全体の冗長化」が重要になります。現場の目で見ると、確認したいのは次の点です。

  • 発電機を何台並べ、何台止まっても大丈夫にするのか(たとえば、必要な台数に1台予備を足す「N+1」)
  • 点検のために発電機を止めるときも、残りで足りるのか
  • 電力網からの受電をどれだけの大きさで確保しておくのか。補助のつもりでも、発電機が止まったときに全量を受けられなければ、本当の意味での予備にはならない
  • 蓄電池が、発電機の切り替えのあいだを、何分つなげるのか

論点4:AIの電力は「急に動く」。蓄電池の役目は大きい

AIの学習では、何千ものGPUがほぼ同時に計算を始めたり止めたりします。そのため、電力の使用量が短い時間で大きく上下することがあります。米国では、データセンターの電力が一度に大量に抜けて、電力網が揺れた例もあります(3.8GWが1分あまりで消えた日)。

電力網は大きいので、ある程度の揺れは吸収できます。でも、敷地内の発電機だけだと、急な変動に回転数(周波数)が追いつかないことがあります。ここで、電気をすぐに出し入れできる蓄電池が、発電機と負荷のあいだの「クッション」になります。①で蓄電池が組み合わされているのは、停電対策だけでなく、この役目もあると考えられます。

論点5:「どこでも建てられる」は、「ガスが来る場所なら」

電源併設型は、電力網の空きを気にしなくてよい分、場所の自由度が上がります。ただし、その代わりに燃料が安定して届くことが条件になります。

  • 都市ガスの中圧の導管が近くまで来ているか
  • 導管がなければ、LNGを運んで貯めるのか(タンク、運ぶトラック、地域との合意)
  • 大きな地震のあと、ガスの供給はどうなるか。一般に、中圧の導管は耐震性が高いとされますが、施設として何日分の燃料の備えを持つかは別の問題です

「電力網の制約」から「燃料の制約」に変わる、と言ってもよいかもしれません。九州での計画がどこになるかは、ガスの供給網がどこまで来ているかと深く関係するはずです。

論点6:「型」をつくるのは、実は一番難しい

④の標準化・モジュール化は、立ち上げを早くする決め手です。建物と発電設備をパッケージにしておけば、設計をゼロからやり直さずに済み、機器もまとめて発注できます。

一方で、データセンターは土地ごとに条件が違います。地盤、気候、騒音の規制、ガスと電力網の状態、そして周りの住民。北九州の小学校の隣の計画のように、発電機の音や燃料の保管は、地域にとって大きな関心事です。発電設備が「非常用」ではなく「ふだん動いている」電源併設型では、なおさらです。

どこまでを「型」で決め、どこからを土地に合わせるか。標準モデルの出来は、その線引きにかかっています。

まとめ

  • 日立、東京ガス、Brookfield、Hartree の4社が、敷地内の発電設備を主な電源にする「電源併設型グリーンデータセンター」の協業を開始。最初の計画は関東と九州。場所・規模・時期は未公表
  • 狙いは、電力網の空きを待たずに建てること。発電設備と建物をパッケージ化した「型」を、各地に展開する考え
  • JERA千葉が「既存の大型発電所の隣に1つ」なのに対し、4社は「発電設備つきの型を、あちこちに」
  • 発表資料の注記から、発電は燃料を燃やす前提と読める。「グリーン」は、カーボンオフセットや非化石証書で埋め合わせる意味。その要件はこれから決める
  • 現場の論点は、コージェネの排熱を冷房に使える相性のよさ、発電が止まったときの冗長化、AIの急な電力変動と蓄電池、燃料の供給という新しい制約、「型」と土地の線引き

「電気がないから建てられない」を、「電気ごと持ってくる」で解決する。 その「電気」が何でできているのかまで含めて、関東・九州の初号案件の中身に注目です。

※アイキャッチ画像はイメージです。4社の計画の実際の施設を描いたものではありません。


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関連用語: PPA / カーボンニュートラル / RE100 / UPS / PUE

出典

この記事は DCトレンド研究 が独立した第三者の立場で執筆しています。