45℃の水でAIを冷やす — KDDI堺「フェーズ2」と日立の新しい冷却板。なぜ「ぬるい水」で電気が減るのか

✍️ DCトレンド研究編集部(現役DCエンジニア監修)
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KDDI、堺に次世代GPUと「45℃の水」

2026年10月27日、KDDIが、大阪堺データセンターの今後の計画を発表しました(KDDIの発表)。

大阪堺データセンターは、シャープの液晶パネル工場の建物を活用し、2026年1月に稼働したAIデータセンターです(堺の記事はこちら)。今回の発表で、データセンターの設備にかかわる部分は次のとおりです。

項目発表の内容
新しいGPU2027年度に、NVIDIAの次世代サーバー「HGX Rubin NVL8」を導入
置き場所大阪堺データセンターの建屋内に、コンテナ型データセンターを整備。従来の建て方より工期を大幅に短くする
冷却主要な演算部品やネットワーク部品を直接液冷。最大45℃の冷却水で動く設計
効果外気を利用する「フリークーリング」が使え、冷却にかかわる電力を最大90%削減

同じ日に始まったKDDIのイベント「KDDI SUMMIT 2026」では、これを「フェーズ2」として紹介しています。ケータイ Watchの報道によると、コンテナ型は主要部分を工場でつくって現地で組み立てる方式で、通常約18カ月かかる工期を約9カ月に短縮できるとしています。設置場所は、堺のデータセンターの空いているスペースです。

同じ週、日立も「ぬるい水で冷やす」冷却板を発表

その数日前の10月21日には、日立製作所が、GPUを冷やすための新しい冷却板(コールドプレート)を開発したと発表しています(日立の発表)。

項目発表の内容
狙い45℃程度の冷却液を使う「高温水冷却」でも、GPUをしっかり冷やす
仕組み冷却液を、GPUの面に沿って流すのではなく、発熱する部分に向けて流す「U字トンネル流路」。数千本の細い流路を並べ、熱を受け取った液はU字に折り返して出口へ。冷たい液と温まった液が混ざらない
性能(試作品の実測)冷却液の流量が毎分4Lのとき、熱抵抗0.011K/W、圧力損失27.6kPa。従来の構造より、同じポンプの力で高い冷却性能
効果(試算)東京など代表的な都市の外気温度で、チラー(冷凍機)の年間の稼働を試算したところ、熱を外へ捨てるための冷却電力を30%削減できる見込み

KDDIの「最大90%」と日立の「30%」は、比べる対象や前提が違うので、そのまま比べることはできません。ただ、2社とも同じことを言っています。冷却水を温かくできれば、冷却の電気が大きく減るということです。

【現場視点】なぜ「ぬるい水」で電気が減るのか

熱の通り道を、順番にたどる

まず、液冷のデータセンターで、GPUの熱がどう外に出ていくかを見てみます(詳しくはKIX15の記事でも解説しています)。

  1. GPUの熱を、上に載せた冷却板の中を流れる冷却液が受け取る
  2. 温まった冷却液は、CDU(冷却液分配装置)で、建物側の冷水に熱を渡す
  3. 建物側の水は、屋上などにあるチラー(冷凍機)や冷却塔で冷やされ、熱は外気に捨てられる

ポイントは3番目です。熱は、温度の高いほうから低いほうへしか自然には流れません。

  • 冷却水が外気より温かければ、ファンで外気を当てるだけで、熱は自然に外へ逃げていきます。これがフリークーリングです。電気はファンとポンプの分しかかかりません
  • 冷却水が外気より冷たくなければならない場合は、熱を「低いところから高いところへ」くみ上げる必要があります。これをやるのがチラーで、エアコンと同じ仕組みです。ここに大きな電気がかかります

「18℃の水」と「45℃の水」の違い

従来の空冷のデータセンターでは、部屋を冷やすために、十数℃程度の冷たい水をつくるのが一般的でした。日本の夏、外気は30℃を超えます。冷たい水を外気より低い温度でつくるには、チラーをフルに回すしかありません。

ところが、GPUが45℃の冷却水でも動くなら、話が変わります。

冷却水の温度日本の夏(外気35℃)日本の冬(外気5℃)
十数℃チラーが必要外気で冷やせることもある
45℃外気のほうが低いので、外気で冷やせる外気で冷やせる

45℃の水なら、真夏でも外気のほうが温度が低いので、チラーを回さずに熱を捨てられる時間が、一年のほとんどになります。チラーという「いちばん電気を食う機械」をほぼ止められる。これが、KDDIの「冷却の電力を最大90%削減」の中身だと考えられます。

「冷却板」が鍵になる理由

では、なぜ今まで45℃の水を使わなかったのか。それは、水が温かいほど、GPUを冷やす力が弱くなるからです。GPUの表面と冷却水の温度差が小さくなれば、運べる熱が減ります。

そこで重要になるのが、日立が改良した冷却板の性能です。日立が示した熱抵抗0.011K/Wは、「1Wの熱を運ぶのに、冷却液とGPU表面のあいだで何℃の温度差が必要か」を表す数字です。仮にGPU1個の発熱を2kWとすると、温度差は約22℃。熱抵抗が小さいほど、同じ温度差でたくさん熱を運べる、つまりぬるい水でも冷やせることになります。

従来の冷却板は、冷却液がGPUの面に沿って流れるため、流れの後半ほど液が温まって、冷やす力が落ちていました。日立のU字トンネル流路は、まだ温まっていない液を発熱部に直接届けることで、この問題を解決しようとしています。

KDDIが入れるRubin NVL8は、NVIDIAの設計として45℃の冷却水に対応しています。サーバーの側と冷却板の側、両方の進化がそろってはじめて、「ぬるい水」が実用になるということです。

【現場視点】それでも気をつけたい3つのこと

1. 「冷却の電力90%減」は「施設全体の90%減」ではない

減るのは、冷却にかかわる電力です。データセンター全体の電力の大部分は、GPUなどのIT機器そのものが使います。冷却の電力が大きく減れば施設の効率(PUE)はよくなりますが、電気の総量が10分の1になるわけではありません。

また、KDDIの発表でも、直接液冷するのは「主要な演算部品やネットワーク部品」です。電源やメモリなど、空気で冷やす部品も残ります。その分の冷房は引き続き必要です。

2. 外に熱を捨てる「場所」は要る

フリークーリングでも、熱を外気に捨てるための大きな熱交換器(ドライクーラー)や冷却塔は必要です。コンテナを建物の中に置いても、熱の出口は建物の外にあります。

  • ドライクーラー:水を使わず、ファンで外気を当てて冷やす。水は使わないが、大きな面積と、ファンの音への配慮が必要
  • 冷却塔:水を蒸発させて冷やす。効率はよいが、蒸発した分の水を補い続ける必要がある

つくばの記事で触れたように、住民が地下水への影響を心配する地域もあります。どちらの方式で熱を捨てるかは、電気だけでなく、水や音の問題でもあります。

3. 「温かい排熱」は、捨てずに使える可能性もある

45℃の水でGPUを冷やすと、戻ってくる水はさらに温かくなります。欧州では、データセンターのこうした排熱を、地域の暖房に使う例があります。日本では受け手となる暖房網が少なく、実例はまだ限られますが、温かい水を出すデータセンターほど、排熱を使いやすくなることは覚えておきたい点です。

コンテナ型で「9カ月」— 速さの理由

フェーズ2のもう一つの柱が、コンテナ型データセンターです。

建物を一から建てる場合、基礎、躯体、内装、電気、空調と、工事を順番に進める必要があります。コンテナ型では、サーバーを置く箱と冷却・電源の設備を工場で並行してつくり、現地では運び込んでつなぐだけになります。KDDIはこれで、約18カ月を約9カ月に縮めるとしています。

堺の場合、もとの液晶工場の大きな建屋の中に置くので、雨や風の影響を受けずに作業でき、建物の床の強さや電力の引き込みといった既存の設備を生かせるのも利点です。KDDIは1期目で、この建屋を使って、通常4年以上かかる整備を1年足らずで立ち上げています。

AIのGPUは、1〜2年で世代が変わります。建物を建てている間に、入れるはずのGPUが古くなってしまっては意味がありません。昨日の記事で取り上げたAnthropicの「建物は早く、チップは後から」と同じく、データセンターを、GPUの世代交代の速さに合わせる工夫といえます。

ちなみに、液冷の要となるCDUでは、ニデックが10月14日、米国のOCP Global Summitで、最大3.2MWの冷却能力をもち800V直流にも対応する大型CDU「NIR3.0」の試作機を公開し、2027年前半の量産を目指すとしています(ニデックの発表)。サーバー、冷却板、CDU、そして建物の作り方まで、液冷の部品が日本企業からもそろい始めていることが分かります。

まとめ

  • KDDIが10月27日、大阪堺データセンターに2027年度、NVIDIAの「HGX Rubin NVL8」を導入すると発表。最大45℃の冷却水で動き、外気で冷やすフリークーリングにより、冷却の電力を最大90%削減するとしている
  • 堺の建屋内にコンテナ型データセンターを整備し、工期を約18カ月から約9カ月に短縮する「フェーズ2」
  • 日立は10月21日、ぬるい冷却液でもGPUを冷やせる冷却板(U字トンネル流路、熱抵抗0.011K/W)を発表。東京などの外気条件で、熱を捨てる冷却電力を30%削減できる見込み
  • 冷却水が外気より温かければ、チラーを回さずに外気で熱を捨てられる。45℃なら、日本の真夏でもそれができる。これが「ぬるい水」で電気が減る理由
  • 注意点は3つ。減るのは冷却の電力であって全体ではないこと、熱を捨てるドライクーラーや冷却塔の場所と、水・音の問題は残ること、そして温かい排熱を活用する余地があること

AIの熱は、もう「冷やす」ものではなく「外に流す」ものへ。 冷却水の温度が上がるほど、データセンターは日本の夏でも、エアコンに頼らずに動けるようになります。

※アイキャッチ画像はイメージです。KDDI大阪堺データセンターの実際の設備を写したものではありません。


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関連用語: フリークーリング / DLC(直接液冷) / 液冷 / PUE / WUE

出典

一次資料

報道

この記事は DCトレンド研究 が独立した第三者の立場で執筆しています。